ポルシェ911にローンを組んで乗っている年収300万円のフジシマです。
比較的お手頃なポルシェ911として当ブログではよく取り上げている996と997.1。
それらの中心をなしているメカニズムは似ています。996も997もボディの基本構造は同じで、997前期型ではエンジン・トランスミッションも996と基本的には同一のものが搭載されていました。
この2つのモデルはカレラ同士で比較すると性能面での違いはそれほど多くないとも捉えられ、違いがわかりにくい部分があるので本記事でできるだけわかりやすくご紹介できればと思います。
今回は996と997(特に前期型)の
- スペックの違い
- スペックの以外の違い
について書きます。
初めに結論
996と997の違いは総合的な商品力の違いだと思います。
つまり、996と比較すると997は全体的な質感の向上が行われスペックに現れる部分よりもそうではない部分が変わったと私は考えます。
その過程の中で多くの点で改良が加えられ、今日にまで続くポルシェ911のマーケティングに則ったグレードのラインナップや豊富なオプションの基礎的な部分がこの997で確立されました。
996よりも997の方が装備は充実していますが、年式が新しい分997の方が中古販売価格は高くなる傾向にあるので本記事での内容と価格差を踏まえつつ自分に合ったポルシェ911を選んでみてください。
996からの性能アップはわずか?
まずはスペック表を載せておきます。
996.1カレラ | 996.2カレラ | 997.1カレラ | 997.1カレラS | |
最高出力[ps]@[rpm] | 300@6800 | 320@6800 | 325@6800 | 355@6600 |
排気量[cc] | 3383 | 3595 | ← | 3824 |
全長[mm] 全幅[mm] 全高[mm] | 4430 1765 1305 | ← 1770 ← | 4425 1810 1310 | ← ← 1300 |
車両重量[kg] (MTモデル) | 1430 (1380) | 1470 (1420) | 1480 (1440) | 1500 (1460) |
ホイールベース[mm] | 2350 | ← | ← | ← |
996と997.1においてエンジン、トランスミッション、ボディの基本構造は引き継いでいます。カレラでは最高出力は996.2の320馬力から997.1の325馬力と控えめな5馬力増加にとどまり、スペックだけで見るとどうしてもインパクトには欠ける印象です。
しかし、それ以外の部分では997型は大幅に変身を遂げ、スペック以外の商品力をUPさせていました。
スペックに現れない違いは多い
カレラの最高出力の「5馬力UP」以外にはどのような変更があったのでしょうか。
996から997に世代が変わるにあたって全体的に質感の向上が図る一環として、車内騒音の低減や、後述の内外装の変更、そしてRRの二輪駆動モデルであったとしても996に比べて安心感のあるコーナリング性能を獲得するなど、なんとも数字や話題には出にくい部分で改良が加えられました。
〇オートマチックトランスミッション(ティプトロニックS)
先ほど申し上げた通り、996と997.1で使われているATのティプトロニックSの基本構造は同じです。しかしながら改良が行われておりATの「滑り」が少なくなったと言われています。おかげでよりダイレクトな運転が楽しめるとともに燃費性能向上にも貢献しています。地味な変更点であっても運転している人にはしっかりと感じとれる部分ですし、歓迎すべき変更点でしょう。
〇外装
996と997で一番大きい違いはやはり見た目です。996の涙目型や目玉焼き型と呼ばれた形状のヘッドライトから997への原点回帰の丸型(楕円)ヘッドライトを採用したデザインとなりました。それ以降の911のヘッドライトデザインは丸型であるという運命はここで決まりました。ヘッドライトの角度も起こされ、996以前のポルシェのデザインに近づいたと見る人も多いです。リアフェンダーの張り出しも996と比較して大きくなり抑揚感のあるデザインになりました。
〇内装
次に内装です。これも変わりました。996までは曲線をアクセントにした近未来的なコンソールでしたが、997では直線を基調とした内装に方針転換。外装同様に996以前の911に倣ったようなデザインとなり往年の911ファンにも親しみやすく、さらに素材も以前よりは高級感を感じるようなものが採用されています。
996はよく「プラスチッキーな内装」と揶揄されていましたが997では車両価格に見合った程度の内装の質感を手に入れることになったのです。あくまでスポーツカーとしての内装、とみた場合ですが。
また、996ではドライビングポジションの調節に前後の伸縮の「テレスコピック」のみ存在しましたが、997ではついに上下方向の「チルト」も調節可能となり、ドライバーの体形、好みに合わせたベストなポジションが選択できるようになりました。
〇基本のカレラ系グレード体系の完成
そのほかに、911はグレードの棲み分けがはっきりと行われ、幅広い購買層への訴求力を高めました。
具体的にはカレラの上位モデルであるカレラSが追加され、911では初となるデビュー時からグレードによる異なる排気量による2つのエンジン出力が選択可能となりました。
996では4WDモデルのカレラ4の上位モデルであるカレラ4Sの設定はあれど、2WDのカレラの上位モデルはありませんでした。
フジシマの憶測ですが2WDのハイパワーなモデルでも安定した走りを顧客に楽しんでもらえるモデルとなった、というポルシェの自信と判断でしょうか。
また、997.1カレラSの最高出力は997.1カレラから30馬力アップの355馬力。996.2カレラと比較すると35馬力アップなので996カレラからの乗り換えでスペックにもパンチが欲しい方向けの受け皿としての面もあったのでしょう。
各グレード非常に巧妙な位置付けがなされていると感じます。
これでカレラからカレラS、カレラ4、カレラ4Sまでの基本的な4つの商品グレードラインナップが完成しました。
走りの装備の拡充
一方、クルマ自体の走りに関する点では走りのオプションの拡充が図られました。
996から一部オプションで存在したPSM(ポルシェ・スタビリティ・マネジメント)は全車標準装備となり、スポーツクロノパッケージ、スポーツシャシーパッケージ、PASMなどが追加されました。
〇PASM
PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネジメント)は新車デビュー時には話題になりました。カレラにはオプションで、カレラSには標準装備され、街乗りでの乗り心地を担保しながらもスイッチによるモード切り替えで高速走行においても不安感のない足回りのセッティングを両立させました。
PASMはノーマルとスポーツが切り替えられ、脚が硬いモードと柔らかいモード選べるだけでも便利なでした。しかし、このオプション最大の利点は同モード内でも無段階にダンパーの硬さが制御されていることでした。
つまり頻繁にノーマルとスポーツを切り替えない人でもノーマルの制御においても路面からの入力に対して常に最適なストロークスピードを生み出し車体をコントロールします。快適な乗り心地をできるだけ維持しつつも、必要に応じては足を硬めることが自動的に行われます。
さらに、PASM非装着車と比較するとニュルブルクリンクオールドコースのタイムを5秒縮める結果となった、との記述があり速さにも貢献しています。
「快適性と走りを両立する次世代の911」というイメージがより強化されるオプションでした。
〇スポーツクロノパッケージ(通称:スポクロ)
997から登場した人気のオプションがスポーツクロノパッケージです。
エンジン・トランスミッションの制御とそのレスポンスをボタン操作によって変化させられるようになりました。997の走行モードには「ノーマル」と「スポーツ」が標準で用意されておりスポーツクロノパッケージを装着している車両では「スポーツプラス」モードがさらに選択できるようになりました。
スポーツモードを選ぶと低いギアを多用(=ティプトロニックS)するようになりさらにアクセルペダル操作に対するエンジンレスポンスもアップするのですが、スポーツプラスモードではスポーツモードをさらに追い込んだ設定になりました。
これも紳士的な部分と攻撃的な部分の二面性を持つ997を象徴するもオプションでした。
ちなみにスポーツ「クロノ」というだけあって、ダッシュボードの真ん中に見た目の変化としてオマケのストップウォッチが着くようです。ストップウォッチ本体は誰も使ってはいないみたいですけど。
その他の装備
〇PSE(通称:スポエグ、スポエキ)
そのほかにもPSE(ポルシェ・スポーツ・エグゾースト)という車内からマフラーの音量モードが選べるオプションが新車販売時から選択できたりと快適性と楽しさを選べたりしました。
〇可変レシオのステアリングラック
これはかなりマニアックな違いですが、997ではポルシェ初となる可変レシオのステアリングラックが導入され、ステアリングを切り増していくとよりクイックになっていく設定がなされました。
約2.6回転のロックトゥロックで全体的にはクイックですが、それでも過不足なく操作ができ違和感も感じません。997オーナーのわたくしフジシマ自身も可変レシオなどということはつゆ知らずグイグイ楽しくステアリングを切りまくるのでした。
実際に小さめの交差点で左折の時もステアリングを持ち変えずに操作できるので煩わしさがなくそれに付随するデメリットも感じたことはありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
996と997.1の違いを書き出してみると結構違いが出てくる印象です。
997の方が近代化されておりより快適で走りが良いのは997.1で間違いはありません。
996は全幅1800mmに満たず、気軽にどこでも乗れるのでそのような911を好まれる方は996がおすすめです。
こう言った具合にどちらの911が自分に合っているかはその人個人の感覚・感性によります。
乱暴な言い方ですがどちらも15年以上前の型落ちの中古車です。
自分の感性を信じつつ、価格差なども含めて考えていただき、どちらが自分に合っているかを踏まえて自分に合ったモデルを選んでみてください。
今回の記事がみなさまの911選びの参考や気づきになれば幸いです。
では。
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